はじめに:抵抗って、いったい何者?
抵抗(Resistor)とは、その名の通り、電気の流れ(電流)を妨げる部品です。
すべての電子部品は、流れる電気の量が適切でないと、壊れてしまいます。特にLEDのようにデリケートな部品は、少しでも電気を流しすぎると、一瞬で焼き切れてしまう危険があります。
🔑 抵抗の役割(水の絞り弁に例えると)
電気の流れを水道の水の流れに例えると、抵抗の役割が分かりやすくなります。
電気の要素 | 水道での例え | 抵抗の役割 |
電圧(V) | 水道の水圧(押し出す力) | 水圧を一定に保つ |
電流(A) | 実際に流れる水の量 | 水量を制限する |
抵抗(Ω) | 蛇口の絞り(流れにくさ) | 流れすぎを防ぎ、部品を守る |
抵抗の最大の使命は、流れる電流を適切な量に調整し、大切な部品が壊れるのを防ぐことです。
🛠️ 抵抗の構造と「オームの法則」
抵抗自体は、小さな棒状の部品で、極性(向き)がありません。どちら向きに繋いでも同じ効果が得られます。
1. 抵抗値の単位:オーム(Ω)
抵抗の強さは「オーム」という単位で表されます。
- 抵抗値が大きい: 流れにくい(水路が非常に細い) → 電流は小さくなる。
- 抵抗値が小さい: 流れやすい(水路が広い) → 電流は大きくなる。
2. 抵抗値の読み方:カラーコード
抵抗の本体には、抵抗値を示すための 色の帯(カラーコード) が描かれています。データシートがなくても、この色を見れば抵抗値が分かります。
3. オームの法則(V=IR):電気の基本ルール!
電気の流れには、絶対に破ることのできない、たった一つの法則があります。それが「オームの法則」です。
V=I×R
記号 | 意味 |
V | 電圧(ボルト) |
I | 電流(アンペア) |
R | 抵抗(オーム) |
🔑 これが意味すること: 「電流 I を求めるには、抵抗 R で電圧 V を割ればいい」ということです。
I=RV
抵抗 R が大きくなればなるほど、流れる電流 I は小さくなる。逆に抵抗 R が小さくなればなるほど、流れる電流 I は無限に大きくなってしまいます。
⚡ 例題:LEDを安全に点灯させるための抵抗
なぜ抵抗が必須なのかを、LED(発光ダイオード)を使って確認します。
1. LEDの特性(定格)
一般的なLEDは、次のような特性を持っています。
- 動作電圧(Vf): 約 2.0V~3.0V(これくらいの電圧がないと光らない)
- 定格電流(If): 約 20mA(0.02A)(これ以上流すと壊れる)
LEDは、流れる電流が20mAを超えると一瞬で発熱し、焼き切れてしまいます。
2. 抵抗がないとどうなるか?(危険な実験)
例えば、5Vの電源でLEDを光らせたいとします。
- 電源電圧 V電源: 5V
- LEDの抵抗 RLED: 非常に小さい(ほぼゼロ)
オームの法則 I=V/R に当てはめると、抵抗 R がほぼゼロなので、流れる電流 I は無限大になってしまいます。
結果: 電源を入れた瞬間、LEDに膨大な電流が流れ込み、LEDは煙を出して一瞬で破壊されます。
3. 必要な抵抗値を計算する!
目標: 5Vの電源で、LEDに安全な20mAの電流を流したい。
- 回路に必要な電圧を計算:
- 電源電圧 V電源=5V
- LEDが使う電圧 VLED=2V
- 抵抗が受け持つべき電圧 V抵抗=5V−2V=3V
- 必要な抵抗値を計算(オームの法則):
- 抵抗が受け持つ電圧 V抵抗=3V
- 流したい電流 I=0.02A(20mA)
- 抵抗 R を求める: R=IV抵抗=0.02A3V=150Ω
結論: 5Vの電源でLEDを安全に光らせるには、 150Ω(オーム) の抵抗が必要です。この抵抗が電流を絞り込み、LEDを完璧に守ってくれるのです!
💡 ブレッドボードで組んでみよう!
今回は、 「抵抗なし」と「抵抗あり」 の2つの回路を準備し、抵抗の重要性を比較します。
ステップ 1:ブレッドボードへの電源供給
ブレッドボードの縦のレールに安全な5V電源を接続します。
- プラスライン: 5V電源のプラス(+)を、片側のレールの赤の縦ラインに接続。
- アースライン: 5V電源のマイナス(-)を、同じ側のレールの青の縦ラインに接続。
ステップ 2:【危険】抵抗なし回路の配線(絶対に長時間繋がない!)
⚠️ 警告: この回路はLEDを破壊します。一瞬だけ接触させ、すぐに電気を切ってください。
- LEDの配置: LEDの 長い足(+) をプラスラインに接続します。
- アース接続: LEDの 短い足(-) をマイナスラインに接続します。
電源ON: LEDは一瞬だけ非常に明るく光るか、すぐに煙を出して消えます。抵抗がないため、過大な電流が流れて部品が破壊された証拠です。
ステップ 3:【安全】抵抗あり回路の配線
先ほど計算した150Ωに近い抵抗(市販では150Ω~220Ωが一般的)を使います。
- 抵抗の配置: 5V電源のプラスラインから、抵抗をブレッドボードの空いている場所に接続します。
- LEDの配置: 抵抗の反対側の足に、LEDの 長い足(+) を接続します。
- アース接続: LEDの 短い足(-) をマイナスラインに接続します。
電源ON: LEDは計算通りの明るさで安定して点灯し続けます。抵抗が電流を正確に150Ωの抵抗値で絞り込み、LEDを守っている証拠です。
🌟 まとめ:抵抗なくして回路の安全なし!
今回の実験で、抵抗の役割が明確になりました。
- 抵抗の目的: オームの法則に従い、流れる電流を制限し、デリケートな部品を守ること。
- 抵抗の計算: LEDやトランジスタのベースなど、電流を絞りたいときは、必ずオームの法則を使って必要な抵抗値を計算すること。
- 安全性: 抵抗は、トランジスタ、LED、そしてあなたの自作カーセキュリティの回路すべてにおいて、部品を過電流から守るためのヒーローなのです。
地味な部品ですが、これがないと電子工作は成り立ちません。抵抗の知識を武器に、次のステップへと進んでいきましょう!