はじめに:リレーって何?
リレー(Relay)とは、 「小さな電気(信号)で、大きな電気(電力)のON/OFFを切り替える」 ことができる、電磁石を使った自動スイッチです。
あなたの愛車では、カーナビなどの小さな電気(弱電)の操作で、ヘッドライトのような大きな電気(強電)をON/OFFしていますよね?リレーは、まさにその役割を担っています。
リレーの役割(日常の例え)
リレーの構造を、 「ドアの自動開閉システム」 に例えてみましょう。
リレーの部品 | ドアの自動開閉システムでの役割 |
コイル | リモコンの信号(小さな電気)を受け取る部分。 |
スイッチ | 重いドア(大きな電気)を開け閉めするレバー。 |
あなたがリモコン(コイル)をONにすると、モーターが動いて(電磁石が働いて)、重いドア(スイッチ)が自動で開く。リモコンの力は小さくても、重いドアを動かせるのは、リレー(ドアの自動制御システム)が大きな力を使っているからです。
🛠️ リレーの構造と端子の名称
リレーをひっくり返すと、いくつかの金属の足(端子)が出ています。この端子の役割を理解することが、配線の第一歩です。
端子名 | 役割(データシートの用語) |
コイル端子 | 2本。ここに電気(12V)を流すと、リレーが「ON」になる。 |
コモン (COM) | スイッチの「入力」側。ここに流したい電気(電源)を入れる。 |
常時閉 (NC / Normally Closed) | コイルがOFFのとき、ONになっている(電気が流れる)端子。 |
常時開 (NO / Normally Open) | コイルがOFFのとき、OFFになっている(電気が流れない)端子。 |
🔑 覚えるべき動きはこれだけ!
- コイルOFF(電気が流れていない):コモン → NC(常時閉)に電気が流れている。
- コイルON(電気が流れている):コモン → NO(常時開)に電気が切り替わる。
⚡ 例題:「リレーONでLEDを点灯」の仕組み
今回は、このリレーの基本的な使い方を学ぶため、次の簡単な実験回路を作ります。
目標:
- 小さなスイッチ(制御回路)でリレーをONにする。
- リレーがONになったら、別の電源(大電流回路)でLEDを点灯させる。
この実験では、コイルに流す電気と、LEDに流す電気の2つの独立した回路を使います。
1. 制御回路(コイル側)の役割
- 目的: リレー本体をONにする。
- 部品: 12V電源、ON/OFFスイッチ(タクトスイッチなど)、リレーのコイル。
- 動き: スイッチを押すと、12Vの電気がコイルに流れ、内部の電磁石が作動します。
2. 負荷回路(スイッチ側)の役割
- 目的: コイルがONになったとき、LEDに電気を流す。
- 部品: 5V程度の電源(LED用)、LED、抵抗(LEDを保護するため)、リレーのスイッチ端子(コモンとNO)。
- 動き: コモンに5Vの電気を入れておき、コイルがONになると、スイッチがNCからNOに切り替わり、LEDが点灯します。
💡 ブレッドボードで組んでみよう!
ブレッドボードは、半田付けなしで電子部品を抜き差しして実験できる便利な板です。
ステップ 1:ブレッドボードへの電源供給
ブレッドボードの左右にある縦長のライン(レール)を電源として使います。
- 12Vライン: 12V電源のプラス(+)を、片側のレールの赤の縦ラインに接続。
- アースライン: 12V電源のマイナス(-)を、同じ側のレールの青の縦ラインに接続。
- 5Vライン: LED用の5V電源のプラス(+)を、反対側のレールの赤の縦ラインに接続。
- アースライン: 5V電源のマイナス(-)を、同じ側の青の縦ラインに接続。
ステップ 2:制御回路(12Vでコイルを動かす)の配線
リレーをON/OFFする部分を作ります。
- リレーの配置: リレーをブレッドボードの中央に跨るように配置します。
- コイル配線:
- リレーのコイル端子の一つを、ブレッドボードの 12Vライン(赤) に接続します。(途中にON/OFF用のスイッチを挟むと分かりやすいです)
- もう一つのコイル端子を、 アースライン(青) に接続します。
ステップ 3:負荷回路(5VでLEDを点灯させる)の配線
リレーがONになったときだけ光るLEDを作ります。
- LEDの保護抵抗: LEDの足の長い方(アノード)に、LED保護用の抵抗(例:220Ω)を接続します。
- コモンとNOの接続:
- リレーのコモン(COM)端子を、LED用の 5Vライン(反対側の赤) に接続します。
- リレーのNO(常時開)端子を、LEDの抵抗が付いた足(アノード)に接続します。
- LEDのアース: LEDの 足の短い方(カソード)を、LED用のアースライン(反対側の青) に接続します。
✅ 動作確認:リレーの音と光を確認しよう!
全ての配線が終わったら、電源を入れます。
- 電源ON: 12Vと5Vの両方の電源を入れます。このとき、LEDは光っていません(コイルはOFFの状態)。
- スイッチを押す(コイルON):
- 音: リレーから「カチッ!」という小さな音が聞こえます。これは、コイルに電気が流れ、内部のスイッチがNCからNOに切り替わった音です。
- 光: LEDが明るく点灯します。これは、コモンに入っていた5Vの電気が、切り替わったNO端子を通ってLEDに流れた証拠です。
- スイッチを離す(コイルOFF):
- 音: 再び「カチッ」と音がして、スイッチが元のNC側に戻ります。
- 光: LEDが消灯します。
🔑 リレーの動きのまとめ
この実験を通じて、リレーの最も重要な役割が確認できました。
- コイル側(制御): 12Vという操作用の電気を流すだけで、リレーをON/OFFできる。
- スイッチ側(負荷): コイルとは 全く関係のない別の電気(5V) をON/OFFできた。
あなたが自作カーセキュリティでやったことは、まさにこれです!小さな信号(エンジンONの電気)で、大きなサイレンの電気をON/OFFしていたのです。
⚠️ 応用編:リレーとトランジスタの使い分け
前回の応用編でトランジスタも使いましたね。ここで、リレーとトランジスタの使い分けを整理しておきましょう。
特徴 | リレー | トランジスタ(MOSFET) |
制御できる電流 | 非常に大きい(数十A) | 大きい(数十Aまで可能) |
大きさ | 大きい | 極めて小さい |
作動音 | ある(カチカチ) | ない(静音) |
スイッチング速度 | 遅い(ミリ秒単位) | 速い(ナノ秒単位) |
回路の複雑さ | 簡単(5本の配線) | 少し複雑(抵抗や熱対策が必要) |
使い分けのヒント
- リレーは、大きな電気を確実にON/OFFしたいときや、制御する電気(コイル)と動かす電気(負荷)の電圧が大きく違うときに最適です。(例:12Vの信号で220Vの家電を動かすなど)
- トランジスタは、小型化したいときや、高速でON/OFFしたいとき、静音性が必要なときに最適です。
🌟 まとめ:リレーは電気の縁の下の力持ち!
リレーは、目立つ部品ではありませんが、ほとんどの電気製品で使われている、非常に重要な基本部品です。
今回の実験を通じて、リレーの端子の意味、コイルとスイッチの独立した関係、そして小さな力で大きなものを動かすというリレーの魔法の仕組みを理解できたはずです。
この知識があれば、自作セキュリティの回路図も、もう怖くありませんね!あなたの電子工作ライフが、さらに楽しくなることを願っています!