はじめに:なぜタイマーで自動停止させるの?
前回の装置は、オーナーが解除スイッチを押すまでサイレンが鳴り続けるという強力なものでしたが、次のような問題がありました。
- 騒音問題の懸念: 誰もいない深夜に1時間も鳴り続けると、近隣から苦情が来る可能性があります。
- バッテリーの消耗: 大音量サイレンは大量の電気(大電流)を使います。鳴り続ける時間が長すぎると、車のバッテリーが上がり、エンジンがかからなくなるリスクがあります。
そこで、今回のタイマー機能の目標は、これらの問題を解決し、 「犯人をパニックに陥らせるのに十分な時間だけ鳴り、その後は自動で停止する」 賢いシステムを作ることです。
今回の目標とする動作:
- 車に不正侵入し、エンジンが始動する(トリガー)。
- サイレンが鳴り始める(自己保持でロック)。
- 設定した時間(例:5分) が経過すると、自動的に自己保持回路の電気が切断される。
- サイレンが鳴り止む。
🛠️ 新しく追加する電子部品
前回までの部品に加えて、今回はタイマー機能を実現するための核となる部品を一つ追加します。
新しい部品名 | 役割(車の部品に例えると) | なぜ必要か |
タイマーリレー (遅延リレー) | 自動計時スイッチ(目覚まし時計付きスイッチ) | 電気が流れてから、設定時間後にスイッチがON/OFFするという特殊なリレーです。今回は「ON遅延型」や「OFF遅延型」など、用途に合うものを選びます。 |
💡 タイマーリレーの種類(今回使うのは?)
タイマーリレーにはいくつか種類がありますが、今回実現したい動作は「サイレンが鳴り始めてから、一定時間後に回路を遮断する」ことです。
最も簡単なのは、「電源がOFFになった後、設定時間後にスイッチをOFFにする」(OFFディレイやオフタイマーと呼ばれる機能)や、「一定時間ONになった後、スイッチをOFFにする」機能を持つタイプです。
今回は、最もシンプルで確実な方法として、自己保持回路の電源ラインに「一定時間だけ電気を流す装置」を組み込むという形で考えます。
- 使用部品の選択: 電子工作初心者の方には、あらかじめ設定時間(例:5分)のタイマー機能が組み込まれている 市販の自動車用リレー(タイマー機能付きリレー) や、デジタルタイマーモジュール(設定が簡単)と通常のリレーを組み合わせる方法がおすすめです。
今回は、 「ONから設定時間後にOFFになる」タイマーリレー(ワンショットタイマーに近い動作) を使うと仮定して説明します。これが最も分かりやすく、シンプルに機能を追加できます。
⚡ タイマーリレーの仕組み(絵で解説!)
通常のリレーは、コイルに電気が流れた瞬間にスイッチがONになりました。タイマーリレーは、その動作に「時間」という概念を追加します。
タイマーリレーの役割(今回の場合)
今回の目的は「5分後に自己保持を切る」ことです。
- 自己保持リレー(リレー1) が作動し、サイレンが鳴り始める。
- 同時に、タイマーリレーの動作がスタートする。
- タイマーリレーが5分間、自己保持回路に電源を供給し続ける。
- 5分後、タイマーリレーのスイッチがOFFになり、自己保持回路への電源供給を遮断する。
- 自己保持回路のループが切れるため、サイレンが止まる。
つまり、タイマーリレーは、自己保持回路全体の電源供給を「時間制限付き」にする役割を担います。
⚙️ タイマー機能を組み込んだ全体の配線図
前回の回路の「自己保持回路の電源ライン」に、新しいタイマーリレーを直列(一本の線の途中)で追加します。
配線の重要な変更点(タイマーの組み込み)
最も重要なのは、タイマーリレーをどこに挟むかです。
1. タイマーリレーの電源(起動トリガー)
- タイマーリレーのコイル(タイマー動作のきっかけとなる部分)は、オーナーがONにした主電源スイッチの直後に接続します。
- 役割: オーナーが駐車して主電源をONにした瞬間から、タイマーが動作可能な状態(スタンバイ状態)になります。
2. タイマーリレーのスイッチ(電源供給の制限)
- タイマーリレーのスイッチ(ON/OFFする部分)を、自己保持回路全体の電源供給ラインに直列に(途中に)挟みます。
- 配線: バッテリー → ヒューズ → 主電源スイッチ → タイマーリレーのスイッチ → 自己保持リレー(リレー1)の電源入力へ。
動作の流れ(タイマーが止める仕組み)
- オーナーが主電源ON:タイマーリレーに電気が流れ、タイマーのカウントダウンが始まります(ただし、カウントダウンが始まるのはトリガーが来た瞬間、またはONになった瞬間に設定)。
- 不正なエンジン始動(トリガー):リレー1(自己保持リレー)が作動し、リレー2(サイレンリレー)を通じてサイレンが鳴り始める。
- 鳴り始めと同時に:自己保持回路に電流が流れ始めたことを検知し、タイマーリレーの 「遮断タイマー」 が動作開始。
- 5分後:タイマーリレーの内部スイッチが自動でOFFに切り替わる。
- 電源遮断:自己保持回路全体への電源供給が途切れるため、リレー1が強制的にOFFになり、サイレンが鳴り止む。
🛠️ 組み立て手順:タイマーリレーを追加する!
前回の配線をベースに、タイマーリレー(リレー3)を組み込みます。
ステップ 1:タイマーリレーの接続位置の決定
- 前回の主電源スイッチから、リレー1(自己保持用)に繋がっていた線を探します。
- この線の途中に、タイマーリレーを組み込みます。
ステップ 2:タイマーリレーの配線
- タイマーリレーの電源入力:主電源スイッチから出たコードを、タイマーリレーの スイッチ側(電源入力) に繋ぎます。
- タイマーリレーの電源出力:タイマーリレーの スイッチ側(電源出力) から出たコードを、リレー1(自己保持)の電源入力に繋ぎます。
- ※このスイッチ部分が、5分後に電気が流れなくなる「時限遮断器」の役割を担います。
- タイマー動作のトリガー設定:使用するタイマーリレーの仕様に従い、タイマーが「いつ」カウントを始めるかを設定します。
- もし「リレー1がONになったらカウント開始」という動作が必要な場合は、リレー1のコイルの電源ラインからタイマーリレーのトリガー端子に電気を引っ張ります。
ステップ 3:タイマー設定(重要!)
- タイマーリレー本体にあるダイヤルやデジタル設定画面を使って、サイレンを鳴らしたい時間(例:5分、または300秒)を設定します。
4. 解除スイッチの再確認
- タイマー機能を組み込んでも、オーナーが手動で解除するためのスイッチ(前回取り付けたプッシュ式スイッチ)は、タイマーが動作している間いつでもサイレンを止めることができるように、これまで通り自己保持回路のループの途中に残しておきます。
✅ 動作テストと確認(応用編)
最終テストです。タイマーのカウントダウンが正確に動作するかを確認しましょう。
1. 警戒状態へ
- 主電源スイッチをONにします。
2. トリガーのテスト(エンジン始動)
- キーを回し、エンジンを始動させます。
- → 大音量のサイレンが鳴り響くことを確認!
- すぐにエンジンを切ります。
3. タイマー停止のテスト(5分間待機)
- ストップウォッチや時計で時間を計りながら、サイレンが鳴り続けるのを見守ります。
- 設定した時間(例:5分) が経過したとき、自動でサイレンが鳴り止むことを確認します。
- 🔑 ここが今回の成功ポイント! タイマーリレーが自己保持回路の電源を遮断した証拠です。
4. 手動解除の確認
- もし途中で止めたい場合、秘密の解除スイッチを押すことで、時間内でも即座にサイレンが止まることを確認します。
🌟 まとめと次回予告
今回は、自己保持回路にタイマーリレーという新しい部品を組み込むことで、 「自動でONになり、自動でOFFになる」 という、さらに賢く実用的な盗難防止装置に進化させました。これで、近隣への迷惑やバッテリー上がりの心配を減らしつつ、犯人への強力な威嚇効果を維持できます。
次回予告!
いよいよ最終章!第三回は、今回少し触れた 「多重防御」に本格的に挑戦します。車体の揺れを検知する振動センサーや、ボンネットの開閉を検知するドアスイッチ などの「トリガー」を増やして、セキュリティの監視範囲を飛躍的に広げましょう!そして、リレーを使わない小型化のアイデアにも挑戦します。お楽しみに!